温かいものが飲みたい

 ガキの頃、夏になると家族で海に出かけた。一ヶ月ぐらいは滞在していたから、今思えば長いバケーションである。海は僕らが住んでいた場所から遠く、一晩車で移動し翌日のお昼ごろにつく、というパターンだった。前にも書いたけど、車窓から変わり行く風景を見るのが好きで、風を感じなが月が移動するのを見るのが楽しかった。
 決まって真夜中頃に寄るパーキングエリアがあって、眠い目をこすりながら車を降りる感覚を覚えている。夏とはいっても夜は寒く、僕は毎回温かいココアを飲ませてもらった。そこのココアは熱いミルクが入ったカップに板チョコを入れて、溶かして飲むと言うものだった。カップは細長いもので、これまた細長いスプーンが付いていて、そのスプーンで板チョコをグルグル回したり、すくっては溶け具合を見ていた。子供だからもちろん、溶けるのを待てずに板チョコをちょっとずつ食べていって、最後にはかすかにチョコの味がするミルクが残る、というオチになるんだけど、今でもあのときのココアを思い出して、飲みたいと思ったりする。
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