2006/9/28 木 | 2006.09
東京ローズ
僕が愛してやまない(というより取り付かれている)映画「プライベート・ライアン」にこんなシーンがある。トム・ハンクス率いる小隊がとある街に着くと、スピーカーから何かの演説が流れている。それはドイツ軍が作った、アメリカ兵士の志気を下げるためのプロパガンダであった。
「自由の女神は爆破された」
「ニューヨークは炎に包まれている」
等のフレーズを24時間休まずに流していたのだ。着いたばかりの小隊は気にもしないが、その町に駐留する兵士は
「あいつら、俺らがおかしくなるまで流す気だ」
と愚痴る。
実は日本もアメリカを相手に同じ作戦を取ったことがあった。女性に
「今頃あなたの奥さんは隣のヤツとよろしくやっているよ」
「あんたがいない方が幸せだよ」
的な事を言って、戦意喪失を目指した。が、面白いのはこれからで、なんと逆にアメリカ兵に人気が出てしまったのだ。彼女の口からでる言葉と声がどうやら人気の秘密だった。東京ローズは20人はいたと言われていて、その中で一人だけが名乗り出た。名前はアイバ・戸栗・ダキノという女性で、日系二世だった。親戚に会いに日本に来たが戦争のため帰国が出来ず、宣伝放送のアナウンサーになった。そのまま戦争に巻き込まれていく。
終戦後はなんと戦犯容疑で巣鴨プリズンに投獄される。帰国してから反逆罪の汚名を着させられ、禁錮10年と罰金1万ドルが課せられた。しかも市民権を剥奪されている。大統領特赦になるまで10年も服役する。
戦後、アメリカ兵の心を捉えた「東京ローズ」の存在が話題になって、マスコミが大騒ぎになった。そこで彼女が名乗り出てしまった。そこでアメリカ軍隊に目をつけられ、スパイ容疑がかかる。そこが運命の分かれ道だったのか・・・。
実は今月の26日に東京ローズ事アイバ・戸栗・ダキノが90歳でなくなった。戦後何周年の度に彼女に取材を申し込むメディアは多かったが、彼女は一切応じなかった。彼女を有名にしたのは口で、地獄を見せたのも名乗り出た時の口だった。だからこそ「東京ローズ」については一切口を開かなかったのだろう。戦後の数奇な運命に翻弄された東京ローズ。「口は災いのもと」なんて言葉は当てはまりすぎて怖い。
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