真夜中の信号

 学生の頃に深夜までのバイトをしていた。店を閉めてからは閉店処理がありそれを終えての帰宅になるわけで、帰る頃には人一人いない。そんな町を自転車で家まで走るのである。眠いし疲れてはいるんだけど、いつもは喧噪にまみれている町が静かになるこの時間が好きであった。冬は嫌なんだけど、春や夏前の夜には優しい雰囲気があってなんとなくこれが心地良かったんだよね。
 誰もいない、静まりかえったそんな街でも信号は真面目に仕事をしている。滑稽な風景でもあるけど、僕はそれも好きであった。ちょっと寂しいというか切ないというか、誰も見ていなくても色が変わっていくんだよね。手前の信号が変わったと思ったら、こんどはその先の信号が変わり、そのもっと奥の信号が変わる。
 遠くの信号までみることができる一直線の大通りがあって、いつもそこを通って帰るんだけど、そんな時間だし車なんて走っていないから信号は守らなかった。分離帯があって通りを横切るころは出来ないから滅茶苦茶な渡り方はしないけど、もし分離帯がなかったら平気で横断していたと思う。でも、時々だけど、本当に時々、律儀に信号を待つ人を見かけることがあった。当時は携帯電話をいじるなんて事はないから、信号の前でただ立っているだけ。一瞬、なにをしているんだろうと思うんだけど、そういう人もいるんだよね・・。なんでもないことだけど、そこにはドラマがある気がしてたんだよね。
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