よっぱらい

 路上に仰向けで若い男性が倒れていた。上は黒いカーディガン、下はダボダボのパンツに靴はクロックス、首もとにゴールドの細いチェーンが見える。男の周りには黒い手袋をした男性が二人しゃがんでいて、男を見下ろしている。警官である。警官の片方が男性の肩に手をかけ、起こそうとしている。男性は体を揺さぶられていても全く反応しない。あまりにも動かないものだから、場に不憫な空気が薄く流れる。周りを見渡すと野次馬が何人か集まっていて、事の成り行きを見守っている。
 警官のしつこい呼びかけについに男が目を覚ます。目を覚ましたはいいが、自分が置かれている状況を上手く理解できていないのか、言葉にならない音を発するだけである。呼びかける警官に目もくれず、携帯電話を取り出しどこかに電話をかけようとする。電話を操作しながら立ち上がろうとするが、平衡感覚がなくヨロヨロと倒れそうになる所を、警官二人に左右から抱きかかえられる。
 男性が起きた事で興味をなくし帰ろうとしていた野次馬たちが、何か面白い物が起きるんじゃないか?と再度興味をかきたてられ、それぞれの場所から立ち止まって見ている。抱きかかえられた男性はそのまま縁石に腰を下ろし、警官たちと話を始めたようだ。そうこうしている内に男性は後ろのポケットから財布を取り出し、警官に渡そうとしている。警官は「要らないから」という手つきでそれを返す。どうやらまだコミニュケーションが成り立たないようだ。男性はそれから誰かと携帯電話で話したり、警官たちにどなったり、立ち上がろうとしては転んだりを繰り返している。俺は中央署の誰々を知っているんだ!という声だけがかすかに聞き取れた。
 帰りにまたそこを通ったら、その場所には酔っ払いも警官もいなくなっていたが、100メートル先の自動販売機に寄りかかって寝ている男がいて、案の定その酔っ払いであった。酔いがさめる頃にはきっとなにも覚えてないであろう。なんとも迷惑な存在である。
 たまあにこういう人を見かけるけど、ここまでのグデングデンっぷりは初めて。漫画に書かれるような「千鳥足」って本当にあるのね。
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