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ラーメン道。

 少し前までうちで働いていたバイトが就職を決めて辞めていった。彼はすごく真面目かつ能力のある子で、フリータ−ながら「就職する」と決めたら自分一人であっと言う間に本当にテキパキと就職してしまった。要領といいというか、やると言ったらやる、といった感じで芯のしっかりした青年だった。仕事もよくしてくれて、責任感もあって任せられるバイトだった。ガンダムが大好きで、「ガンダムってロボットでしょ?」なんて言ってしまった日には、うるさいうんちくが待っているのであった。
 そんな彼は大のラーメン好きで、店のなかでバイトを集めては「ラーメン部」をかってに作っていた。嫌がる他のバイトを引き連れ、店を閉めてからくりだしていた。彼がいうにはラーメンは道であり、武道である上飲み物であって、尚かつ深夜の2:00にただラーメンを喰いに行くためだけ世田谷まで遠征する価値のある飲み物だそうだ。初めのうちはみんな「行きたくないです〜」といいながらも「しょがねえな」みたいな感じでついていっていた。が、回数がどんどん増えるにつれ、
「胃が痛い」、「胸がムカムカする」、「気持ち悪い」
等のクレームを良く聞くようになった。そのうちこの「ラーメン遠征」は「ラーメン拉致」として名前を変えていき、ピーク時には3日連続で拉致されることもあったという。その頃になると、バイトから
「店長、○○さんにラーメンはもう止めろと言ってもらえませんか?」
と言った本気なのかギャグなのか解らない声もあった
 そんな彼も店を卒業していき、ラーメン拉致はなくなり、本気でホットした人も多かった。が、その彼は最近よく店に出没する。どうやら新入社員としての道は険しいようで、「さみしい」と言っては客として良くきている。みんなはまた拉致られるんじゃないかと心配している・・・。

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