カールじいさんのアレ

 遅ればせながら「カールじいさんの空飛ぶ家」を観賞した。公開当時から絶賛された作品でありながらも、イマイチ心が動かず劇場に行かなかった。PIXAR作品だし、予告編だけで泣けちゃうし、誰もがいい映画だというものだからいいに決まっているよね、なんて思っていたんだけど、今回DVDで見たところちょっとガッカリであった。別に何がダメとかないんだけどね。逆にPIXAR作品としては頭を叩かれた人が出血する描写があったり、人が死ぬ(多分)描写もあり、非常に勇気のある一本だと思う。

 予告編で流れる感動的な映像は冒頭の15分ぐらいのもので、最高のオープニングである。ジジイと奥さんが出会い、恋に落ち、結婚し、手を取り合い生きてきた時間を台詞なしで説明してくれるのだが、これだけでも映画一本分ぐらいの濃さがある。
 しかしやがて別れが訪れる。ジジイは自分の内側に閉じこもり、一人さびしく思い出を守りながら生きていたのだが、ついに2人の夢であった冒険に出る決意をする。若い人が自分の価値観を折って成長する描写は良くあるんだけど、この映画の様に爺さんが成長する物語というのは良く考えたらかなり珍しい。ジジイは途中で「思いでよりも大事な事がある!」という事に気付き、あーだこーだと努力をして大活躍。そして映画は予定通りいい感じで終わる。僕はこの活躍がちょっと引っかかっていて、つまり
「爺さんが今までの自分を超え、新しい自分の価値観を発見し成長するんだけど、どう考えても冒頭の15分の爺さんの方が100倍も魅力的」
に思えるのである。なんていうか、新しい仲間や価値観のために頑張る爺さんもいいんだけど、奥さんのために生きている爺さんの方が全然いいんだよね。これって多分この映画のテーマや意図と全く逆方向に向いている考え方なんだけど、僕は案外これが正しいんじゃないかと思う。爺さんが一番輝くのは奥さんといる時なんだからね。
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