WALL・E

 映画「WALL・E」(面倒なので以下ウォーリーと表記)のDVDが今週発売された。この「ウォーリー」はフルCGアニメで有名なPIXARの作品である。「トイ・ストーリー」、「ファインディング・ニモ」、「カーズ」等を作ってきた会社である。ハズレがなく、どんな年齢層でも楽しめる映画を作ってきたPIXARは一種の品質保障になっていて、公開される作品は全てヒットしている。
 例に漏れずこの「ウォーリー」も大ヒットを記録。劇場は人でごったがえし、大人は素直に感動し、ガキどもは
「うおりいい、うおりいい」
と興奮した。
 「ウォーリー」とは、人類のいない地球に残された掃除ロボットの名前である。掃除をすることが仕事だから、人類がいなくなってからも700年間ずっと一人で掃除をしている。「ウォーリー」(同じ型のロボット)はたくさんいたのだが、一つまた一つ壊れたり止まったりして、稼動しているのはこのウォーリーだけである。このロボットがちょっと変わっていて、珍しいものを集める収集癖があったり、昔の映画「ハロー・ドーリー!」を見ては切なくなったりする。そんな彼の夢はその「ハロー・ドーリー!」の1シーンの様に
「いつか誰かと手をつなぐ」
事である。
 そんな繰り返しの日常の中、ウォーリーの前をピカピカの、いかにも最先端のロボット「イヴ」が現れる。イヴは地球の環境汚染レベルを調査し、植物を探すというミッションを受けていた…。

 ここまで読むと「ウォーリー」は恋あり冒険あり切なさありの普通の映画に聞こえると思う。そして実際そうである。笑いもあり、ハラハラ・ドキドキもあって、最後には深い感動がある。ディズニーっぽい映画であり、安心して子供に見せられる映画である。しかし、ウォーリーには「裏ウォーリー」とも言うべき姿があって、これはこれで面白いのである。
 「裏ウォーリー」はとにかく説教臭いのである。見ていると、なんだかずっと怒られている気がするから不思議である。


ここからちょっとネタバレ。これから見る予定の人はここで止めてください。





 ウォーリーはイヴを追いかけながら、人間が住んでいる巨大な宇宙船にたどり着く。そこには地球を捨てた人間たちの子孫が暮らしている。彼らは一様に丸々と太っている。終始宙を浮いている椅子に座り、会話はモニター越し、スポーツはヴァーチャルで行う。彼らをコントロールしているのは巨大な企業で、その企業が彼らが食べるもの、着るもの(流行)、一日の行動を決めたりする。子供は試験管で生まれる。つまり、人間らしさを失った人間なのである。この「完璧に管理された未来社会」は多くのSF映画で描かれるシチュエーションである。未来に起きている事としてサラっと描いちゃっているけど、実はどれも現在の社会への批判になっている。

・地球はゴミだらけになっている
・人間はみんな運動をしないので丸々と太っている。
・隣にいてもモニター越しで会話をしている。
・みんな同じものを着ている
・みんな同じものを見ている
・みんな同じものを食べている
・巨大な企業の独占
・全てはコンピューター管理

これらの点を見せられると怒られている気がして、ごめんウォーリーーーと思っちゃうんだよね。未来の人間たちは地球があるって事すら知らないから、自分たちが飼いならされていることに気づいていないんだけど、それは今の人類も同じなんだよね。出てくる人間たちの誰よりもウォーリーとイヴの方がずっと表情豊かで、人間っぽいことも大きな皮肉である。

この
「子供でも見れる王道冒険アニメ」

「メッセージ映画」
を両立させてしまうことは中々ないことで、非常に高度な作品だと言える。それをファミリー向けにガキどもに見せていることを思うと、悪意があるとも言える(笑)。しかもエンドロールの最後の最後にも仕掛けがあって、大変嬉しいやらムカつくやらで、見ていない人は必ず見てください!
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