Dark Was The Night-Cold Was The Ground

 僕が生まれた77年に、無人惑星探査機ボイジャーが打ち上げられている。太陽系の外惑星および太陽系外の探査が主なミッションである。ボイジャーには
「他の星の知的生命体や未来の人類が見つけ、解読してくれることを想定して」
ゴールデン・レコードという金メッキされたレコードがついている。そのレコードには地球上の様々な音楽と、55種類の言語による挨拶が記録されている。その音楽の中にはベートーベンやバッハ、モーツァルトといった人類の英知的なものから、日本の尺八やピグミー族の儀式の歌なども収録されている。
 ブラインド・ウィリー・ジョンソンという歌手の
「Dark was the night-Cold was the ground」
という曲も収録されている。ブラインド・ウィリー・ジョンソンはゴスペル音楽界の先駆的者であり、黒人音楽家なら誰もがリスペクトする存在である。弾き語りブルースのかたちをとってはいるが、歌っている内容はゴスペル、つまり神への道を説いているのである。
 ウィリー・ジョンソンは幼くして母を失った。父は再婚するものの、その女が他の男と出来てしまい、夫婦喧嘩の際にその義理の母に目に洗剤をかけられ失明している。ウィリーが7歳の時の事であった。ブルースといえば酒や女の事を歌うのだが、ウィリーはそうでなく、ゴスペルと黒人霊歌を歌った。失明の恨みや無念が彼を神の道へと導いたとされるけど、彼の本当の心や気持ちを誰が理解できよう。

 ゴールデン・ディスクを乗せたボイジャー1号は今も稼働中で、太陽系を抜け、地球から最も遠くにある人工物である。2015年まで通信が可能とされていて、その後も永遠に宇宙の中を移動し続け、地球を離れ続ける。ウィリーの「Dark Was The Night〜」はいつまでも、おそらく人類がいなくなった後も宇宙をゆっくりとさまよい続けるのだ。
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