強さって奴

 自分の子供時代のことを考えていたら、とてつもなく恥ずかしい過去を思い出した。

 初めて小学校に登校した日のことなんだけど、僕は母と離れるのが嫌で嫌で怖くて泣き出してしまった。学校のロビーで母は
「ずっとここで待っているから」
と言って僕を安心させ、先生が教室に連れていってくれたのだけど、僕はずっと窓から外を見ながら母の姿を探してばかりいた。そしてガキなりに知恵を絞り、
「先生トイレに行きたいんですけど」
と手を上げ教室の外に出る口実を作り、本当に母が待っているのかを確認しに行った。今と違ってガキの頃の僕は頭のいい子だったので、母がそこで待っているというのは僕を黙らせるための口実であることは分かっていたのだが、それでも怖くて怖くて、祈るような思いでロビーを覗いた。驚くことに母はそこにいて、僕は安心して教室に戻っていったのである。
 不思議なのはそれからもそのロビーを通るたびに
「そこに母がいるんじゃないか?」
という気がして毎回毎回確認していたのだ。きっと心の中で母に対して
「いれくれた事はすごく嬉しいけど、同じぐらいに申し訳ない」
と思っていたのだと思う。そして子供は子供なりに強くならなきゃと思うものなんだよね。
 僕はその後何度か転向し、違う国の学校に始めて登校するという大緊張をも乗り越えられたのはこの体験があったからだと思う。多分あの日、僕は少し強くなったのだと思う。

 誰にも頼れない、自分だけで何かに立ち向かわないといけない時があるよね。家族や仲間は入り口までは一緒に来てくれるけど、中に入るのは自分だけって時が。今すぐここから逃げ出したい!と思うけど、そういう時に限って、それまでに支えてくれた人たちの顔が浮かんだりする。ある意味ではたちが悪い。(笑)

 僕もこの歳になって、人を支えたり助けたりしないといけない立場になっているはずである。自分では弱いつもりはないのだが、きっと強くもなく、助けたい、力になりたいという思いがあっても上手く行かなかったり形に出来なかったりする。今まで色々な人たちに散々導いてもらった分、僕も誰かを入り口までに導ける人間になりたいと思う、のである。立ち向かう時は一人であっても、母がしてくれたように見守ることは出来るっしょ。
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