サリンジャー

 そういえばサリンジャーが亡くなったね。「ライ麦畑でつかまえて」は誰でも読んだ事があると思うけど、作品が持つ魅力とは別に作家のサリンジャー自信が持つ「伝説性」のインパクトの方がずっと大きかった。

 僕の世代が「ライ麦〜」を読む頃にはサリンジャーはもう隠匿生活に入っていて、家にこもり誰にも会わずにいるという、まるで世捨て人のような印象を持っていた。それは「ライ麦〜」の主人公、ホールデンが偽善に満ちた世界を嫌うことと重なり、
「本人もそうなんだ!」
と強烈な印象があったんだよね。それ以外にもジョン・レノンを殺した犯人、そしてレーガンを撃った奴もこの本を愛読していたこともあって、それらの出来事がこの作品に「得体の知れない魅力」を持たせていたのだと思う。僕も初めて読んだときは親に隠れて読んだことを覚えている。

 ちなみにこの作品を読んだ僕はホールデンに全く感情移入が出来なかった。大して努力もせず、そしてヘマばかりしておきながら世の中の矛盾に文句を言っているだけの子供に感じたのだが、妹と喋りながら将来自分が何になりたいかを語るシーンは大好きである。今思えばその将来像もあやふやでハッキリとしないもので、限りなく危険なものなんだけどね。暴力に走った二人がこの部分を読んでどう思ったのかは非常に興味深い・・・。

 なんか、この作品って僕らが生きる今の時代にピッタリなんだけど、きっとどの時代にもピッタリと合うのだと思う。それが世代を超えても読まれる原因のだろう。

 今思えばサリンジャーは表には出なくても、代理人がいたのだから社会的な生活をしていただろうし、印税をしっかりと守っていたのだから想像していたような仙人みたいな人じゃなかったろう。案外普通のおじいさんだったのかも知れない。だが、作家本人がいなくなっても「ライム麦〜」の魅力は永遠になくならないことを思うと、やっぱり特別な作品なんだよね、良くも悪くも。
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