言わなくてもいいのに。

 昨日の夜、「パイレーツ・ロック」という映画を見た。60年代のイギリスの話で、ラジオ曲が国営のBBCしかない頃の話である。ロックやポップスは規制されていて、BBCでは退屈なクラシックしか流れない。しかし、60年代といえばロックがもっとも熱かった時代(らしい)。その時に活躍したのが海賊ラジオ局であった。法律が及ばない領海外に停泊し、船から放送を行っていたのだ。これが民衆に圧倒的に支持されていたのだが、その人気が大きくなればなるほど政府も圧力を強め、ついに法律を整備して一斉検挙に向かう、というストーリーである。

 船の中での人間模様を描きながら、何とか締め出そうとする政府、それをおちょくりながら上手く逃げ回る海賊ラジオ局のやり取りで映画は進む。そして、その途中でこの映画のウリでもある名曲の数々がかかる。僕が知っている曲も知らない曲もたくさんあったけど感動的な場面もたくさんあって、
「この曲をかけたいからこの場面を作った」
とも思える演出もたくさんある気がした。

 最後の最後にこの海賊ラジオ局は政府と対峙することになり、緊迫した場面でDJの一人が
「国や政府やその役員と比べ、音楽のほうがどれだけ大事で素晴らしいものなのか」
を解くシーンがある。最後の力を振り絞っての感動的なシーンなんだけど、僕はそこで一気に冷めてしまった自分に気付いた・・・。
 こういう、「音楽が世界を救う」的なメッセージや思想を目、耳にすることってあると思う。たしかに金や法律や宗教よりも一つの曲がより多くの人を救うこともあるし、そう信じる自分もいるんだけど、それを大声で言うのってなんか、・・・「偽善」なんじゃないの?って気がしたんだよね、その時。上手く表現は出来ないけど、心では思っていても口にだしたら嘘になってしまうみたいな、そんな感覚なんだけど・・・。なので、ぜひ見て欲しい、いい映画だし、音楽の素晴らしさをこれでもか!と認識できる映画なんだけど、素直に喜べない何かがある気がする非常に困った映画である。
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