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寒い

 世界で一番寒い場所、ロシアのオイミャコンという村では過去にマイナス71.2度という記録があるらしい。どのぐらい寒いかというと、漁師が網を上げるとそこにかかっている魚があっという間に冷凍魚になり、菌も生きていけないので風邪などの病気もないという。何もそんな所でわざわざ住まなくたっていいのに、と思ってしまうのだが実はオイミャコンでは金が採れた時期があったらしい。

 何かの映画での台詞だったと思うけど、
「寒い国は栄えない。それは人の心までが冷えてしまうからだ」
というのがあって、僕は「ナルホドなあ」と思ったのを覚えている。冷静に考えればそんな事はないだろうけど、気候の暖かい国には底抜けに明るいというイメージがある。寒さは内側に籠もるが、暑さは力を放出している感じがある。常夏の国では水着の女性がビーチで遊んでいる時に、雪深い国では老人は暑いコートを纏い、帽子を目深くかぶる。この世界のどこかで同時に真逆の事が起こっている事を思うと、なんとも不思議な気分になる。
 寒いとか、暑いとかって実はちょっと特別な事なのだろう。雪が降ると誰もが文句タラタラだけど、雪を見たことのない人はたくさんいる。 
 学生時代に病院の清掃のバイトをしていた事がある。1日に1回屋上を掃除するんだけど、真夏の屋上というのはドアをくぐった瞬間にモワッと暑さの壁が襲ってきて、その場で体が溶けそうになる。で、掃除をしていると看護婦さんが車椅子に患者を乗せて散歩にやってくる。時間はいつも昼過ぎの、一日の中でも最も日差しが強い時間だった。こんな暑い時にわざわざ屋上に来なくてもいいのに、と僕はずっと思っていた。患者はいい年のお爺ちゃんで、自分では立てない状態の患者である。どう考えても体にいいわけはない。
 同じ事が何回かあって、僕は勇気を出して看護婦さんになぜその時間に患者を連れ出すのかと聞いてみた。看護婦さんが言うには、「暑い」や「寒い」を感じる事は大事な事で、特にそういった患者には生きているという実感が沸くのだそうだ。だから一番暑い時間に患者を連れ出すのだ。僕はなんだか関心して、立場や状況によって物事の受け止め方が違う事を悟った。
 暑いのも寒いのもいい所もあれば、嫌な所もある。天気の変化を楽しめる領域にたどり着くのはいつだろうか。

posted by @6 : 17:50

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