2007/7/17 火 | 2007.07
映像の価値
週末に「ゴースライダー」という映画を見たのだが、これがもう何とも言えないぬるさ加減で途中でやめようと思ったぐらいである。アメコミの映画化なので当たり外れがハッキリしすぎるのは当たり前だけど、こればかりはちょっと厳しかった。映画製作の中ではCGの全盛期はもう過ぎていて、CGを多用する映画には厳しい時代である。よっぽど気をつけない事には陳腐なものが出来上がってしまう。
分岐点はもちろん、9.11である。
高層ビルに飛行機が突っ込むあの映像は瞬く間に世界中に放送され、その映像を目にした誰もが、現実は映画よりもずっと先を行っている事を知った。当たり前と言えば当たり前の事なんだけど、空想は絶対に現実には追いつかないし、実は足下にも及ばない。スーパーマンが空を飛んでも、ダースベイダーがルークの手を切っても、タイタニックが海に沈んでも、ネオが弾丸をよけても、リアルな映像を前にしては意味をなさない。映画の歴史を彩ってきた名映像はその価値を一気に失ってしまったのだ。
9.11以降に映画で客を驚かす事はとても難しくなっている。価値観のハードルが何倍にも上がったからで、どんなに技術が進んでも同じようなショックを観客に与える事は難しいだろう。本当にあのインパクトは凄かった。
でもまあ、虚像である事が映画のいい所である。あり得ない夢、起きて欲しい夢、起きて欲しくない夢を見せてくれる。そして映像で人が死んでも現実では死んでいない。あくまでも表現であって、現実に戦いを挑む事でもない。
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