2007/10/17 水 | 2007.10
美談
僕の好きな美談の中に、浅草キッドと北野たけしが出てくるものがある。
浅草キッドとその師匠である北野たけしは一年に1回集まり、飲む席があるのだそうだ。その席では年功序列はなく、浅草キッドの二人がたけしより上の立場で会話ができるルールになっていて、たけしを「たけちゃん」「たけしくん」と呼び捨てにし、「たくさん食べて芸を磨けよ」等と普段は言えない事をいうのだ。そしてたけしは「はい、すみません」と答えるのだそうだ。
その会の終わりに浅草キッドの二人はたけしに
「にーちゃん、今日のタクシー代だ。とっておけ」と言って、たけしにご祝儀袋に入れた1万円さつを何枚かあげる。たけしはそれを「すいません、いただきます」と言って喜々と持って帰るのだ。弟子が師匠に金をあげるのだ。普段ではあり得ない事ではあるものの、その日だけはそれが許される。
で、その会を開くようになった数年後、浅草キッドはたけしの自宅を訪れる機会があった。そこで見たのは神棚に添えられたご祝儀袋だった。たけしは会の終わりにもらっていたご祝儀袋を全てお供えしていたのだ。師匠が弟子の出世を喜ぶのは当たり前の事ながら、弟子からもらったご祝儀袋をそのまま神棚に供えるなんて感動的である。ちょっとうろ覚えだし、こういう話っていくらでも創造されていらから本当かどうかは解らないけど、師匠と弟子の関係が良く現れている話だと思う。浅草キッドはたけしに対して絶対に揺るがない忠誠心をいつも口にしているけど、こういう所から来るんだな、きっと。
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