2007/8/28 火 | 2007.08
非日常のススメ
韓流の先駆けとなり、今の韓国映画ブームを作った映画に「シュリ」というのがある。恋に落ちたカップルがそれぞれ北朝鮮の工作員(暗殺者)と韓国の工作員で、二人は愛し合いながらも殺し合わなければいけない運命の過酷さを巧みに描いたラブストーリーで、涙無しには見られない傑作である。アクションシーンの演出、テンポの良さ、映像の発色までが当時の日本映画にはなかった高水準で、
「韓国でハリウッド並の作品を作られてしまった」
「韓国の映画界は日本よりもずっと進んでいた」
「海の向こうでこんなの凄いの作られたら日本はどうすれいいんだ?」
「さすがキムチパワー。爆発シーンの迫力がすげー」
と後悔当時は評判になった。
この映画がのもう一つの魅力は芸達者な役者たち。その中でも主人公のソン・ハッキュと相棒役のソン・ガンホの演技はそれこそ日本の役者の10年先を行っていて僕は素直にあこがれた。特にハン・ソッキュ演じる苦悩する男の姿は最高に格好よかった。
ハン・ソッキュのビジュアルはそんなに良い訳でもなく逆にちょっとアレなんだけど、僕が感じた格好よさには裏がある。もちろん映画の演出がそうである。
「雨の中をスーツで走る男。その手にはベレッタ(拳銃)。胸には返り血のあと」
「自分の身を省みず危険な任務に向かう男」
「自分の気持ちを押し殺し、大儀に身を捧げる男」
「幾多の危険を乗り越え大勢の人を救う男」
どれも普通の人には訪れないシチュエーション。俺だって敵の弾を交わしなら、雨の中を走ればそこそこカッコいい映像になるだろう。でも僕の毎日にはそんな場面はない。そう、非日常なんだよね。だから格好よく移るんだよね。ハードボイルドな場面を乗り越え、ヒーローになることは誰でも憧れるだろうけど、実際そんな目に合いたくない。非日常は憧れるけど、自分の日常は守りたい。実際はそんなもんだよね。フロリアーナの中に敵国のスパイが紛れ込んでいたら困るしね。
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